「MIAGETEMIRU」東京23区
公募によって選ばれた作家に、約10日間、作品展示の場を提供するコニカミノルタプラザのギャラリーにて、2014年に開催された写真展です。
東京に長く住んでいるのに、「東京」というものをまだ撮ったことがない。一度はテーマ性を持って何か撮れないないだろうか? そんな思いから東京の街を改めて歩き始めました。
しかし・・・「何を感じてどう撮れば良いのだろう?」
何度となく迷い自問し、諦めに近い中断を余儀されながらも、構想から10年近くの歳月をかけ、東京23区を全て歩きようやく撮りためた作品群です。解体され、今はもう見られない施設、建築物、そして変わってしまった景観もあります。
アナログからデジタルへとシフトしつつあった時代で、フィルムと中判カメラで撮影した最後の写真作品となりました。
※写真展をはじめ、文化・芸術に多大な貢献を果たしてきたコニカミノルタプラザは、2017年1月に運営終了いたしました。3つの会場を擁する素晴らしいギャラリーで、個展開催の機会を得られたことは幸いでした。
「MIAGETEMIRU」を「あるいてみる」
「MIAGETEMIRU」での撮影地をGoogleマップで確認することができます。ストリートビューでは、同じ風景を発見することも。ただ、撮影当時と変わってしまった場所、なくなってしまった建築物もあるのでご注意。
各写真ページにあるのアイコンが目印です。
東京の空には…
遠いある日のこと、友人が運転する黒いシトロエンの助手席に座って、天井に空いたサンルーフから、ぼんやりと空を見上げていた。流れていく四角く切り取られた都心の空は、フロントガラスに映る車の渋滞や雑踏とは対照的に、静寂ささえ漂って来そうな別世界。
「東京にもきっと、遠い島で見たような高い空と、微妙に形を変えながら現れては消えていく雲が、あのビルの向こうに広がっているんだろうな。」
MIAGETEMIRU…すっかり日常となってしまった東京の街と、その向こう側にあるものを、普段とは少し違う視点でとどめてみたいと思い始めていた…
昼夜を問わず発着の止まぬ空港、幾重にも交差する高速道路と鉄道の高架。都市の周辺には、ライフラインとなるエネルギー関連施設、治水や浄水といった水関連施設、そして高い煙突を抱きクリーンな化粧を施されたゴミ処理施設。歴史とともに移転を余儀なくされた工場とその跡地、かつてそこで働く人を集めた工業団地。経済の中心となる高層建築と束の間の気晴らしを与えてくれる商業施設、娯楽施設。ここで生活する人のために、壊しては建てられるマンションとコンパクトに押し込まれた住宅地。
川は東京を他から隔て、見渡せない広大な平野の彼方には、展望台に上がって初めて目にする淡い山々の影。
調べるほど、歩くほどに(もちろん全ての街は行けなかったが)、意識することのない東京をリアルに体感する。
MIAGETEMIRU…その向こうに何が写ったのだろう。